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フェラーリ テスタロッサ(1984-1991)とは
~デザインと鼓動が織りなす一台~
私がフェラーリ テスタロッサと初めて出会ったのは、まだ子供の頃でした。商店街で、赤いボディに刻まれた美しいサイドスリットを持つその車を見た瞬間、心が高鳴るのを感じました。それまで見たどの車とも違う、圧倒的な存在感。まるで未来から来た芸術品のような美しさに、私の人生は大きく変わったのです。
テスタロッサという名前が持つ意味の深さを、当時の私は理解していませんでした。「赤い頭」を意味するこの名前は、エンジンの赤く塗装されたカムカバーに由来します。しかし、真の意味はそれ以上のもの。1950年代のレーシングカー「250テスタロッサ」から受け継がれた、勝利への情熱と革新への挑戦精神が込められているのです。
1984年から1991年までの7年間に生産されたテスタロッサは、フェラーリの歴史における重要な転換点に位置します。それは単なるスーパーカーではなく、自動車デザインの革命でした。ディエゴ・オッティナらピニンファリーナのデザインチームが描いた美しいフォルムは今なお色褪せることがありません。
フェラーリ・テスタロッサは、見る者の心を鷲掴みにする“造形のエネルギー”を具現化したクルマです。1984年に発表されたその姿は、ただ美しいだけでなく、ラジエーター空冷の課題を解決するための機能美(サイドスリット)を大胆に取り入れ、以降のスーパーカーデザインに強い影響を与えました。オリジナルのTestarossaは1984年発表、1991年まで生産されました(以降、別設計の512 TR / F512 M が登場します)。
サイドスリットに込められた革新の精神
テスタロッサを語る上で欠かせないのが、あの印象的なサイドスリットです。多くの人がデザイン上の装飾だと思っていますが、実際は高度に計算された機能美の結晶です。
この革新的なデザインが生まれた背景には、技術的な必然性がありました。先代の512BBiがフロントにラジエーターを配置していたのに対し、テスタロッサではサイドマウント方式を採用。この変更により、フロント部分にラゲッジスペースを確保し、実用性を大幅に向上させることができました。
しかし、サイドにラジエーターを配置するためには、十分な冷却風を取り入れる必要があります。そこでピニンファリーナが考案したのが、あの美しいスリットでした。一部市場の規制をクリアしながら、必要な通風量を確保し、同時に視覚的インパクトも与える。まさに機能と美の完璧な融合でした。
ピニンファリーナのデザインチームがまとめ上げたプロポーションは、幅広いボディと低いルーフラインで力強さを表現しつつ、細部に至るまで冷却・空力に配慮された設計となっています。
エンジンとサウンドの魅力
テスタロッサに搭載された心臓はTipo F113 として知られる約4.94リットルの180度V型12気筒です。フェラーリが追い求めたのは“パワーだけでなく、エンジン音と振動がもたらす感性価値”であり、このエンジンはその要求に応えます。公表されている代表的な仕様として、欧州仕様の出力はおよそ390PS(287kW)を発揮します(モデルイヤーや市場により仕様差あり)
1984年デビュー当初のテスタロッサは、ボッシュKジェトロニック(途中からKEに変更)インジェクションを搭載していました。現代のエンジンシステムは洗練されておりパワー・トルクとも当時とは比べ物にならないほど進化しています。ですが、当時のテスタロッサのエンジンには独特の魅力があります。エンジンを始動する瞬間の、あの力強い響き。アクセルペダルを踏み込んだときの、ダイレクトで純粋な反応。ある程度の踏力を必要とするクラッチ操作も含め、テスタロッサならではのアナログ的な手応えは、まるで楽器を演奏しているような感覚を与えてくれます。
テスタロッサの技術的進歩
4バルブ化 180度V型12気筒エンジン
1984年にデビューしたフェラーリ・テスタロッサに搭載されたエンジンは、48バルブシステムを採用したパワーユニットでした。現代では可変バルブタイミングやダイレクトイグニッションなどの機能がありますが、当時は多バルブ化でパワーを稼ぐ時代でした。
基本エンジン仕様
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型式: F113A
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エンジン形式: 180度V型12気筒DOHC 48バルブ
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総排気量: 4,943cc
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ボア × ストローク: 82.0mm × 78.0mm
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圧縮比: 9.2:1
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バルブ構成: 1気筒あたり4バルブ
出力性能(地域差あり)
最高出力: 390PS(287kW)/ 6,300rpm
最大トルク: 50.0kg・m(490Nm)/ 4,500rpm
技術革新の核心 - 4バルブ化の意義
テスタロッサのエンジンの技術革新は、従来の512BBiが2バルブ仕様だったのに対し、テスタロッサでは1気筒あたり4バルブ、つまり12気筒で合計48バルブという複雑なシステムを実用化したことにあります。
この技術革新により、吸排気効率の大幅向上、高回転性能の向上、アクセル操作に対する応答性の改善が実現されています。
当時は「時速300km戦争」と呼ばれる動力性能競争がありましたが、動的性能は、最高速度: 290km/h(欧州仕様)、0-100km/h加速: 5.8秒(欧州仕様)で、これらの数値は1984年当時としては市販スポーツカー界のトップクラスの性能でした。
メール :info@ferrari-testarossa-shop.com
電話番号:0120-557-981(フリーダイヤル、携帯からかけられます)
営業時間:8:00~23:00 年中無休
所在地 :岐阜県美濃市立花529-6
代表 :畑中 正也
本稿は当店による独自まとめです。
参考:Ferrari公式サイト(https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/testarossa)
CG NEO CLASSIC vol.07 Designed byピニンファリーナ(https://cargraphic.co.jp/publication/book/mook20.html)
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